朝礼だった。隣に立っていた若い女性社員が、ふっと半歩、離れた。
気のせいだと思いたかった。でも、わかってしまった。——臭っているのは、私だ。
その朝、私はちゃんとシャワーを浴びていました。前の晩の寝不足と体調不良はあったにせよ、清潔にしてきたつもりだった。なのに、です。自分では気づけない。これが、加齢臭のいちばん怖いところです。
体臭は、本人だけが気づけません。そして周りは、気づいても言えない。だから静かに、人を遠ざけていきます。あの日の半歩の距離が、私にすべてを教えてくれました。
今日は、そこから私がやり直した全記録を書きます。何がいちばん効いたのか、そして何が途中で要らなくなったのかまで、正直に。
40代のにおいには、犯人が2人いる
まず、敵の正体をはっきりさせます。ここを間違えると、対策の場所を間違えます。
犯人その1:ノネナール(加齢臭)
いわゆる加齢臭の原因物質です。1999年に資生堂が発見し、「加齢臭」という言葉自体もこのとき生まれました。
仕組みはこうです。歳を重ねると増えてくるパルミトオレイン酸という脂肪酸が、過酸化脂質や皮膚の常在菌によって酸化・分解されてノネナールになります。資生堂によれば、男女問わず40歳を過ぎたころから増えてくる。出やすいのは頭部、首の後ろ、耳のまわり、胸もと、脇、背中です。
犯人その2:ジアセチル(ミドル脂臭)
そしてもう一人、40代にはこちらのほうが厄介な犯人がいます。ジアセチルです。マンダムが発見し、「ミドル脂臭」と名づけました。
こちらは皮脂ではなく、汗が原因です。汗に含まれる乳酸を、皮膚にいる表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌が代謝することで生まれます。30代半ばから汗腺の働きが落ちて乳酸が増えるため、発生量は40歳を中心に多くなる。においは、脂っぽい、使い古した油のような感じです。
40代は、加齢臭とミドル脂臭が重なる年代である。片方だけ対策しても、片方が残る。
そして、ここが実践上いちばん大事な点です。この2つは、どちらも「頭」が最大の発生源です。ノネナールは頭部の皮脂分泌が多いために、ジアセチルは頭部とその周辺でもっとも強く出るために。
体をどれだけ丁寧に洗っても、頭を後回しにしていたら効きません。私はここを長いこと分かっていませんでした。
私がやったのは「全部、いっぺんに」
あの朝から、私は対策を一気に始めました。ひとつずつ試して様子を見る、という悠長なことはしていません。
これが結果的に正解でした。全部いっぺんにやると、自分がどんどん更新されていく感覚があって、楽しくなる。加齢臭対策が、我慢の作業ではなく、自分を作り直す遊びに変わりました。
ただし、あとから振り返れば効き目には明確な差がありました。順に書いていきます。
いちばん効いたのは、食べものだった
結論から書きます。5つやったうちで、いちばん効いたのは食事を変えたことでした。しかも早い。1ヶ月も経たないうちに、自分でも分かるほど変わりました。
やめた、というより減らしたのは、にんにく、ニラ、そして質の悪い油で揚げた揚げ物です。
ここで正確に書いておきます。食べた油が、そのままノネナールに変わるわけではありません。ノネナールの材料は、あくまで皮脂に含まれるパルミトオレイン酸です。ただ、その脂肪酸を酸化させるのが過酸化脂質であり、体の酸化が進めばノネナールも増えていく。食事は、材料ではなく「酸化しやすさ」を通じて効いてきます。
完全にやめる必要はありません。「明日は人と会う」という日は避ける。それだけで翌日の自分が変わります。においは、口に入れたものの正直な答え合わせです。
この話は、のちに腸内環境そのものを整えるところまで行き着きました。においの出どころは、体の表面ではなく中にあります。
洗うべきは、実は「頭」だった
次に変えたのが、洗い方です。
何気なく使っていた普通のボディソープをやめ、薬用デオドラントタイプに変えました。洗い上がりの感覚がまるで違います。
そして洗う場所です。頭、首の後ろ、耳のまわり、胸もと、背中。先に書いたとおり、加齢臭もミドル脂臭も最大の発生源は頭です。ここを最後にざっと流して終わり、では対策になりません。しっかり、ただしこすりすぎずに洗います。
私が使っているのは、メントール無配合で毎日ヒリヒリせずに使えるタイプです。ちなみにルシードは、ミドル脂臭の原因物質ジアセチルを発見したマンダムのブランドです。原因を見つけた会社が作っている、というのは選ぶ理由としては十分でした。

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足のにおいは、靴の菌を断つ
意外な盲点が、足でした。上半身をどれだけケアしても、靴を脱いだ瞬間に台無しでは、あまりにもったいない。
私が使ったのはグランズレメディです。靴を履く前に毎日ふりかける。足ではなく靴の中の菌そのものに効くので、数週間で靴のにおい自体が消えていきました。
あわせて、脱いだ靴は中敷きを出して乾かしてから靴箱へという習慣もつけました。湿気を閉じ込めないだけで、においの前提条件が変わります。

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使う前に知っておいてほしいこと
- ルシードのボディウォッシュは医薬部外品です。肌に合わないと感じたら使うのをやめてください。使用上の注意はパッケージで確認を
- グランズレメディは、靴の中に入れる粉です。入れすぎると粉が靴に残りやすく、黒い靴下には白く付くことがあります
- グランズレメディには、並行輸入品と国内正規品があります。上のリンクは両方を載せています。表示や保証が異なる場合があるので、買う前に確認してください
- どちらも、体の内側の対策の代わりにはなりません。私が手放せたのは、食事と運動で体が変わってからでした
衣類は熱でリセットし、体は内側から変える
洗っても落ちきらない衣類の菌は、熱で処理するのが早い。私は靴下や下着をドラム式洗濯乾燥機の熱乾燥でまとめてリセットしています。乾燥のついでに終わるので、手間はゼロです。においの住みかを、毎日リセットする感覚。
そして運動と睡眠です。ノネナールは酸化から生まれるので、体の酸化を防ぐ生活そのものが、最大の加齢臭対策になります。
私はメンタルの安定と引き締まった体を目指してHIITを始めましたが、これが体臭にも効きました。汗をかいて代謝が整い、睡眠の質が上がる。狙っていなかった場所に、結果が出ました。
そして、要らなくなったものがある
ここからが、この記事でいちばん書いておきたいことです。
続けているうちに、買わなくてよくなったものが出てきました。
腸内環境が整い、運動が習慣になってからは、ボディソープが専用のものでなくてもよくなりました。今は牛乳石鹸でも問題ありません。においの発生量そのものが減ったので、洗浄剤の力に頼る必要がなくなったということです。
足も同じです。靴下をドラム式で乾燥までかけるようにしたら、グランズレメディを使う必要がなくなりました。菌が繁殖する前提を消してしまえば、殺菌するものは要らない。
ただし、誤解してほしくないので、はっきり書いておきます。私の場合は、最初の時期は、あったほうが効果が早く出ました。
体質が変わるまでには時間がかかります。その間、においは出続ける。その期間を短くしてくれたのが、私の場合はこうした専用品でした。骨折したときの松葉杖と同じで、要らなくなるのが目的であって、最初から使わない理由にはなりません。
道具で立ち上げて、体で維持する。順番を逆にすると、いつまでも買い続けることになる。
「消す」から「まとう」へ
ある日、会社の年配の事務員さんに言われました。「いい匂いがするね」
あの朝、半歩離れられた男がです。長く勤めている方で、こういうことにはいちばん正直な人でした。だからこそ、効いた。
そこで私の中の何かが切り替わりました。最初は「臭いを消す」守りのケアでした。でも気づけば「どうせなら、いい匂いの男になろう」という攻めに変わっていた。香水も、ハンドクリームも、選ぶのが楽しくなってきます。
今日からできる、3つのこと
明日、人と会う予定があるなら、今夜のにんにくと揚げ物をやめる。いちばん効いて、いちばん早いのがこれです。私は1ヶ月かからずに変化を感じました。お金もかかりません。
今日から、頭を最初に洗う。加齢臭もミドル脂臭も、最大の発生源は頭です。順番を変えるだけなので、今夜から実行できます。
立ち上がりの1〜2ヶ月だけ、専用品に頼る。デオドラントソープと、靴用の除菌剤。体が変わればいずれ手放せます。それまでの保険だと思ってください。
まとめ
加齢臭は、年齢のせいではありません。手入れをやめたサインです。
そしていちばん怖いのは、においそのものではなく「自分では気づけない」こと。周りは気づいていても、言ってくれません。だからこそ、気づいた今日が変わりどきです。
順番はこうです。まず食べるものを変える。頭から洗う。立ち上がりだけ道具に頼る。そして体が変わったら、道具を置いていく。
買って消すのは、対策。買わなくてよくなるのが、解決。



