48歳のとき、転職しました。転職エージェントを使い、最終的に5社から内定をいただきました。
やったことはいくつもありますが、いちばん効いたのは、たぶんこれです。
クリフトンストレングスを、自己PRではなく「応募先を選ぶ基準」に使ったこと。
先に、言葉の説明をさせてください。
クリフトンストレングス(CliftonStrengths)は、アメリカのギャラップ社がつくった才能診断です。177問の質問に答えると、34種類の「資質」が、自分の中で何位なのか順番に並びます。
日本では長いあいだ「ストレングスファインダー」という名前で知られてきました。書店で見かける『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』の本がそれです。いまの正式な名称がクリフトンストレングスで、中身は同じものと考えて差し支えありません。この記事でも、以降はクリフトンストレングスと書きます。
「あなたは◯◯タイプです」と分類する性格診断とは、少し違います。34個すべてに順位がつくのが特徴で、1位から34位までの並び順が、そのまま自分の説明書になります。
診断結果の使い方を調べると、ほとんどが「職務経歴書にどう書くか」「面接でどう語るか」の話です。もちろんそれも必要でした。でも私の場合、その前段でやったことのほうが、結果を決めたと思っています。
強みは「売り込む材料」だと思っていた
診断を受けた当初、私も同じでした。上位5つの資質を眺めて、これをどう職務経歴書に落とし込むかを考えていた。
でも、あるとき順番が逆だと気づきました。
売り込む前に、決めることがあります。どこに売り込むか、です。
どれだけうまく自分を語っても、その強みが要らない会社に入れば、力は出せません。逆に、強みがそのまま仕事になる会社なら、たいして飾らなくても伝わります。
40代・50代の転職で「経験が活かせない」と感じる方が多いのは、語り方ではなく、行き先の選び方の問題かもしれません。
私の診断結果(上位5つと下位5つ)
実際の結果を出します。全34資質のうち、上位10と下位5です。
| 上位10 | 下位5 | |
|---|---|---|
| 1. 着想 | 30. 適応性 | |
| 2. 収集心 | 31. 回復志向 | |
| 3. 社交性 | 32. 共感性 | |
| 4. コミュニケーション | 33. 公平性 | |
| 5. 活発性 | 34. 慎重さ | |
| 6. 最上志向 | ||
| 7. ポジティブ | ||
| 8. 個別化 | ||
| 9. 達成欲 | ||
| 10. 未来志向 |
領域でいうと、私は「影響力」に強みが出ました。
ここで大事なのは、上位5つだけを見ていたら、この記事に書くことは何もなかったということです。転職の判断に効いたのは、むしろ下位のほうでした。理由は後半で書きます。
この並びから、やりたい仕事が2つ決まった
上位を眺めていて、自分の中で仕事が2つに絞られました。
ひとつめ|営業
社交性(3位)とコミュニケーション(4位)。人と会うことが得意で、話しているうちに相手の欲求や要望を引き出すことができる。
これは、営業そのものです。
ふたつめ|商品開発
着想(1位)。アイデアを出すこと、そして自社や自分の手が届く範囲で形にできることを考えるのが好きでした。
絵に描いた餅ではなく、実際に作れるものを構想する。これは新製品の開発に向いています。
そしてこの2つは、私の中でつながっていました。人と会ってニーズを引き出し、それを自社で作れる形にする。片方だけでは、半分しか使えません。
だから条件はこうなりました。営業と商品開発の両方ができる会社に入る。
両方できる会社は、中小企業しかなかった
ここで会社の規模が、自動的に決まりました。
大きな会社では、営業と開発は別の部署です。両方を兼ねることは、まずできません。この2つを一人でやれるのは、中小企業だけでした。
ここは順番が大事なところだと思っています。
私は「中小企業がいい」と最初に決めたわけではありません。やりたい仕事から逆算したら、規模のほうが決まったのです。
年収や知名度から入ると、この順番になりません。そして、強みが使えない場所を選んでしまいます。
さらに、4つの条件を足した
中小企業ならどこでもいい、ではありません。商品開発を本当にやるには、会社側に条件が要ります。
- 工場など、生産設備を持っている……自社で作れなければ、構想が形にならない
- 過去に新製品を開発した経験がある……やったことのない会社は、進め方を知らない
- 社内に設計者がいる……理由は次の章で書きます
- 経営者が「新製品を開発したい」という強い思いを持っている
この4つめが、いちばん重要でした。
設備があっても、経験があっても、経営者にその気がなければ、新しいものは一つも通りません。中小企業では、社長の意向がそのまま会社の方針になります。逆に言えば、社長さえ本気なら、話は速い。
だから面接では、こちらも社長を見ていました。面接は、選ばれる場であると同時に、選ぶ場でもあります。
苦手は、最初から人に任せる前提で選んだ
ここで下位の資質が効いてきます。
私の最下位は慎重さ(34位)でした。細かく詰めること、精密に検証することは、率直に言って向いていません。
製品開発でいえば、図面を書くこと、強度計算をすることがそれにあたります。私がやったら、時間がかかったうえに精度も出ません。
だから、そこは人に任せると決めました。そして任せるには、任せる相手が要ります。
先ほどの条件に「社内に設計者がいる」が入っているのは、このためです。
下位の資質は、諦める場所ではありませんでした。人を探す場所でした。
これは診断を受けて、いちばん変わったところかもしれません。それまでは、苦手なことを人に頼むのは、どこか負けたような気がしていました。順位という形で並べられると、あきらめがつきます。34番目のものを頑張るより、1番目を使うほうが、会社にとっても得です。
以来、苦手なことを人に任せるのが、素直にできるようになりました。
全34資質を取るべき理由
ここまで読んでいただければ分かると思いますが、上位5つだけでは足りません。
上位だけ見ても「自分は何が得意か」しか分かりません。「何を人に任せるか」は、下位を見ないと決まらないのです。そして転職では、後者のほうが会社選びに直結しました。
2026年時点の料金は、こうなっています。
| 種類 | 料金 | 分かること |
|---|---|---|
| 書籍のアクセスコード | 書籍代のみ | 上位5つだけ |
| 上位5つのみ(単体) | 24.99ドル | 上位5つだけ |
| あとから34資質に追加 | 49.99ドル | 1位から34位までの順位 |
| 最初から全34資質 | 59.99ドル | 1位から34位までの順位 |
ただし、知っておいてほしいことがあります。あとからでも全34資質に追加できるのです。上位5つを受けたあとに、49.99ドルで残りの順位を開けられます。
ですから、最初のハードルは低くて構いません。いきなり60ドル近くを出すのが重いなら、まずは書籍に付いているアクセスコードで試してみてください。書籍代だけで上位5つが分かります。
『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 最新版 ストレングス・ファインダー2.0』(ジム・クリフトン、ギャラップ著/古屋博子訳/日経BP・日本経済新聞出版)です。2,420円、224ページ。ただしアクセスコードは1冊につき1回きりなので、中古で買うと使えないことがあります。ここは注意してください。
そして、上位5つを見て「もっと知りたい」と思ったら、そこで追加すればいい。できれば全部の資質を見たほうがいいのは確かですが、順番はあとからでも間に合います。
業務経歴書は、会社ごとに作り替えた
ここからは、選んだあとの話です。
履歴書はもちろん書きましたが、力を入れたのは業務経歴書のほうでした。そして、提出する会社ごとに修正して出しました。
同じものを使い回さなかった、ということです。
面倒に思えるかもしれません。でも、応募先を絞り込んだあとなら、そこまで大変ではありませんでした。数を打っていないから、一社ごとに手をかけられる。選ぶ段階を丁寧にやると、後工程が楽になります。
面接で緊張しなかった理由
正直に書くと、面接ではあまり緊張しませんでした。
理由は単純で、それまで自分が面接をする側にいたからです。何を見られているかが分かっていました。
40代・50代の方には、同じ経験をお持ちの方が多いはずです。採用する側に立ったことがあるなら、それは面接での大きな持ち札になります。「見られる側」に回った瞬間に忘れてしまうだけで、知識としては持っている。
面接の前に、自分が面接官だったときのことを思い出してみてください。それだけで、部屋の空気が変わります。
入ってからの動き方で、選び方が正しかったと分かった
転職後にやったことは、はっきりしていました。
図面と強度計算は、設計者に任せる。私はいろんな人と会って、世の中のニーズを探す。
そして販売の段階では、ウェブと、実際に会うことの両方を使って販売網を作ることに力を注ぎました。ここでも、やっていたのは人と会うことです。
つまり入社後の私は、診断で上位に出た資質を、そのまま毎日使っていたことになります。
会社選びが合っていたかどうかは、入ってからの動き方に出ます。得意なことをやっている時間が長いなら、選び方は合っていた。私はそう思っています。
今日からできる、3つのこと
1. 受けるなら、全34資質を取る
上位5つだけでは、任せる相手を決められません。数千円の差で、会社選びの材料が倍になります。
2. 「やりたい仕事」を2つ書き出す
1つではなく2つです。その2つを両方やれる会社はどんな会社かを考えると、規模や業種が自然に絞れます。私の場合は営業と商品開発でした。
3. 下位5つを見て、「誰に任せるか」を条件にする
苦手なことを引き受けてくれる人が、その会社にいるか。これを応募条件に入れている人は、ほとんどいません。だからこそ効きます。
まとめ|強みは、地図だった
この記事の要点をまとめます。
- 48歳で転職。エージェントを使い、最終的に5社から内定
- 診断結果は自己PRではなく、応募先を選ぶ基準に使った
- 上位から営業と商品開発の2つを決め、両方できる会社を探したら中小企業に絞られた
- さらに生産設備・開発経験・社内の設計者・経営者の本気度の4条件を足した
- 下位の資質は、諦める場所ではなく、人を探す場所だった
- 業務経歴書は会社ごとに作り替え、面接は「面接する側」の経験が効いた
診断を受ける前、私は強みを「自分を大きく見せるための材料」だと思っていました。
でも、実際に役に立ったのは、そういう使い方ではありませんでした。
強みは、売り込むための材料ではなく、行き先を絞り込むための地図でした。
40代・50代の転職は、数を打つ勝負ではありません。どこに行くかを間違えなければ、打つ数は少なくて済みます。私が5社まで残せたのは、自分が優秀だったからではなく、合わない会社に最初から応募しなかったからだと思っています。




