数百万円を溶かしてから、13年間なにもしなかった|新NISAで私がオルカンだけを積み立てている理由

2000年代半ばの暗い部屋で、下降するチャートが映る液晶モニターの光を浴びながら画面を見つめる30代後半の男性

2007年、私はFXで数百万円を失いました。手元にあったお金の、ちょうど半分です。

リーマン・ショックの前年でした。サブプライムローンという言葉がニュースに出はじめたころで、相場は毎日大きく動いていました。取り返そうとしているうちに、半分がなくなっていました。

幸い、生活は壊れませんでした。減ったのは貯金であって、毎月の家計ではなかったからです。配偶者にはもちろん伝えました。そして、FXはそこでやめました。

それから13年間、私は投資というものを一切していません。

この記事は、その私がいま何を、いくら、どういう考えで積み立てているかという話です。商品の比較や証券会社の選び方は後半に短く書きます。その前に書くべきことのほうが、ずっと多いからです。

目次

リーマン・ショックのとき、私は何も持っていませんでした

翌2008年、リーマン・ショックが来ました。世界中の株価が落ちて、多くの人が資産を減らした年です。

私は、何も減りませんでした。すでに何も持っていなかったからです。

あの時期を「無傷で切り抜けた」とは言えません。私はその前年に、自分ひとりで自分の相場をやって、勝手に負けていただけです。市場に残っていた人は、その後の回復も受け取っています。私は受け取っていません。降りた人間には、戻ってくるものが何もありません。

それでも当時の私は、もう二度とやらないと決めていました。「投資は怖いもの」ではなく、「自分には向いていないもの」という結論でした。毎日画面を見て、上がった下がったで気持ちが動く。あの状態にもう一度なるのが嫌だったのです。

それでも、もう一度お金を入れることにした

戻ってきたのは、旧NISAが終わる3年ほど前です。2007年から数えて、13年が経っていました。

きっかけは、長期の積立と分散は、私がやっていたFXとはまったく別の行為だと知ったことでした。

私がやっていたのは、短い時間で値上がりを当てにいく行為です。当てられなければ減ります。一方、世界中の株式に少しずつ、毎月同じ金額で買い続けるというのは、当てにいく行為ではありません。タイミングを予想することを、そもそも放棄する方法です。

そして、長く持つほど成績のばらつきが小さくなるというデータがありました。金融庁が公開している資料に、こういう試算が載っています。

保有期間100万円が元本割れ
5年74万円〜176万円あり
20年186万円〜331万円1989年以降のデータではなし
出典:金融庁「NISA早わかりガイドブック」(2023年7月)。1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資を行った場合の試算。

5年では元本割れが起きています。ところが20年では、少なくとも1989年以降のデータで元本割れになったケースはありませんでした。同じ商品を持っていても、持つ年数によって性質が変わる。これが、私がもう一度お金を入れる気になった理由です。

ただし、この数字はそのまま鵜呑みにしないでください。正直に、3つ書いておきます。

  • この試算は「株式と債券」に分散した場合のものです。後半で紹介するオルカンは株式だけでできているので、値動きはこれより大きくなります。同じグラフを株式100%の根拠に使うことはできません
  • 20年です。15年ではありません。50歳から始めれば70歳です。私も最初は「15年くらい」と思っていましたが、資料を読み直したら20年でした
  • 過去にそうだったというだけで、将来を約束するものではありません。資料自体にも、そう明記されています

それでも私は続けています。20年が遠いなら、なおさら今日からしか始められないからです。

子どもにお金がかかる時期は、少額でいい

始めたとき、うちの子どもは大学生でした。学費と生活費がいちばんかかる時期です。

ですから、最初は少額にしました。枠を使い切ることなど、まったく考えていません。その時期に無理をして積立額を上げていたら、たぶんどこかで止めていたと思います。

本格的に金額を上げたのは、上の子が社会人になったタイミングです。出ていくお金が一段落してから、手取りの10%程度に引き上げました。

40代・50代向けの記事には「一日でも早く、多く」と書いてあることが多いのですが、この年代は、お金が出ていく量が人によってまったく違います。子どもが大学生の人と、独立した人と、そもそもいない人では、同じ金額を積めるはずがありません。

かかりどきは少額で構いません。止めないことのほうが、金額よりはるかに大事です。

転職で、現金の意味が変わりました

積立を始めたあとに、考え方が一つ変わりました。投資に回さないお金のほうが大事だ、と思うようになったのです。

きっかけは、48歳で転職したことです。

会社を移るというのは、決まるまでのあいだ、入ってくるお金の予定が消えるということです。収入がゼロになるかもしれない状況を、そこで初めて肌で感じました。あのとき手元に現金がなかったら、条件の悪い会社でも早く決めてしまっていたかもしれません。

それ以来、生活費の1年分を現金で置くようにしています。一般には3か月から半年分と言われることが多いので、厚めです。この厚さは、あの経験がなければ選んでいません。

現金は、収益を生まない代わりに、判断を急がなくてよくしてくれます。40代・50代にこれから起こりうることを考えると、半年より1年のほうが自分には合っていました。

この1年分は、どこかからまとまって用意したものではありません。普段の収入の中から、少しずつ貯めたものです。

そのうえで、積立額のルールはこうしています。

  • 毎月の収入のうち、特別費を含めて90%以内で暮らす
  • 残りを投資に回す

特別費というのは、毎月は出ないけれど必ず来る出費のことです。車検、家電の買い替え、冠婚葬祭、帰省。これを外して計算すると、あとで必ず足りなくなります。含めたうえで90%に収まる範囲、というのが私のやり方です。

「NISA貧乏」にだけは、ならないでください

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

私の親族に、現金をほとんど持たずに、ほぼ全部を投資に回している人がいます。

その人の趣味は海外旅行です。ところが最近、その旅行に行くかどうかを悩んでいます。お金がないわけではありません。資産としては持っています。ただ、それが手元の現金になっていないので、動かせないのです。

私はこれを「NISA貧乏」と呼んでいます。制度を使い切ることが目的になって、今の生活のほうが痩せていく状態です。

枠が余っていると損をした気になる。その気持ちは分かります。でも、枠は義務ではありません。使い切らなくても、誰にも怒られません。

そして40代・50代にとって、今できることと、10年後にできることは同じではありません。体力も、一緒に行ってくれる相手も、そのときどきで変わります。今しか行けない旅行を我慢して、20年後に現金化する。それが本当に得なのかは、考えたほうがいいと思っています。

削るべきなのは、満足度の低い支出であって、人生の楽しみではありません。

効率の悪い保険と、聞く耳の話

もう一人、別の話をします。職場の同僚です。

その人は、貯蓄型の保険で積立をしています。私から見ると、手数料の面でも、増え方の面でも、効率がいいとは言えない商品でした。

一度、軽く話をしてみました。返ってきたのは「保険で積み立てているから大丈夫」という言葉でした。それ以上、話が進む雰囲気ではありませんでした。ですから、軽く言っただけで終わらせました。

これは、その人が悪いという話ではありません。お金の話は、勧めてくれた人との関係ごと信じてしまう構造になっています。商品を疑うことが、人を疑うことになってしまう。だから、途中から合理的な話が入らなくなります。

私がファイナンシャルプランナーの無料相談をすすめないのは、これが理由です。無料の窓口は、どこかで商品の提案が出口になっていることがあります。相談した相手を信用するほど、その提案を断りにくくなる。お金を払わない相談には、払わないなりの出口があると考えたほうが安全です。

かといって、独立系のファイナンシャルプランナーにきちんと依頼すると、それなりの費用がかかります。

いくら積むかは、AIに家計を見せて決めた

そこで私が実際にやったのは、AIにファイナンシャルプランを作ってもらうことでした。

手取り、固定費、生活費、貯蓄の額、いつまでにいくら必要か。これらを伝えて、無理のない積立額を出してもらいます。返ってきたのは、老後資金の積み上げを優先したほうがいい、という趣旨のアドバイスでした。

これは役に立ちました。売る商品を持っていないので、話が商品に着地しません。何度聞き直しても無料です。そして何より、自分の家計を数字で並べて眺めるという作業自体に意味がありました。

AIの答えが絶対だとは思っていません。ただ、「自分にとって無理のない金額はいくらか」を決めるだけなら、これで十分でした。方向が定まってから、必要に応じて専門家に相談すればいいと思います。

商品と証券会社は、最後の5分で決まる

ここまで決まってしまえば、残りはあっという間です。

私が積み立てているのは、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、いわゆるオルカン1本です。これ1本で世界中の株式に分散されます。

もう一つの定番がeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)です。どちらでもいいと思いますが、迷うならオルカンをすすめます。理由は単純で、米国がこの先も勝ち続けるかどうかを、予想しなくて済むからです。世界全体に分散していれば、主役の国が入れ替わっても比率が勝手に調整されていきます。

予想しなくていい、というのは私にとって決定的でした。予想して負けたのが、2007年の私だからです。

証券会社は楽天証券を使っています。普段から楽天のサービスを使っていたから、という程度の理由です。SBI証券でも構いません。どちらもネット証券の最大手で、上の商品を扱っていますし、手数料も使い勝手も十分です。ここで何日も比較するのは、いちばんもったいない時間の使い方です。

そして口座を開いたら、その勢いのまま自動積立の設定まで終わらせてください。開設しただけで何も買っていない人が、驚くほど多いのです。

仕組みにしてしまえば、意志の力は要りません。この考え方は、服の2年ルールスマートカーテンとまったく同じです。人間の意志は当てになりません。

そして、口座は見なくていい

いま私は、口座をほとんど見ていません。値下がりのニュースが流れても、確認すらしないことがあります。

これは、私の精神が強いからではありません。もっとひどい値動きを、実際に見たことがあるからです。

FXの画面は、数分で数万円が動きます。あれを毎日見ていた人間にとって、世界中の株式に分散した投資信託の値動きは、正直なところ静かなものです。数百万円を溶かした経験は、褒められたものではありません。でも、あの経験があるおかげで、いまの私は動じずに済んでいます。

もしあなたが投資でお金を減らしたことがあるなら、その経験は無駄ではないと思います。減らし方を知っている人ほど、静かな方法の価値が分かります。

まとめ

いま同世代に聞かれたら、この順番をすすめます。私自身は順番が前後しましたが、先に現金を決めたほうが、ずっと迷いません。

  1. 生活費1年分を現金で確保する。投資に回さないお金を先に決める
  2. 特別費を含めて、収入の90%以内で暮らす。残りが投資に回せる額
  3. その額をAIに検算してもらう。家計を数字で並べて眺める
  4. 楽天証券かSBI証券で口座を開き、オルカンを自動積立に設定する。ここは5分
  5. あとは見ない

資産形成でいちばん難しいのは、商品選びではありません。今を楽しむお金と、将来のためのお金の境目を、自分で引くことです。そこさえ引ければ、あとの作業は本当に30分で終わります。

13年かけて分かったのは、こういうことでした。

今日を削って未来を買うのではなく、両方を持てる額を選ぶ。

※本記事は個人の考えをまとめたものであり、特定の金融商品の購入を勧誘するものではありません。掲載した試算は過去のデータに基づくもので、将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

あわせて読みたい

目次