「胸を張るとテストステロンが上がる」は誤りだった|それでも姿勢を直すべき理由

差し込む光の中、背筋を伸ばしてまっすぐ立つスーツ姿の50代の日本人男性の全身

集合写真を見て、愕然としたことがあります。

同じ列に並んでいるだけなのに、姿勢のいい人と自分とでは、写り方がまるで違う。顔でも服装でもありません。立ち姿だけで、これほど印象が変わるのかと思いました。

そこから姿勢を意識するようになったのですが、この記事にはひとつ、訂正しなければならないことがあります。

目次

まず、この記事に書いていたことを訂正します

以前このページには、こう書いていました。「2分間のパワーポーズでテストステロンが約20%上昇し、コルチゾールが約25%低下する」。ハーバード大学のエイミー・カディの研究として紹介していたものです。

調べ直したところ、この数字は現在、支持されていません。

  • 2015年、Ranehillらが約5倍の被験者数で追試を行ったところ、ホルモンの変化は検出されませんでした。「力を感じる」という主観的な効果だけが再現されています
  • 2016年、元の論文の筆頭著者であるダナ・カーニー本人が、「パワーポーズ効果が実在するとは思わない」「存在しないという証拠は否定しがたい」と公式に表明しました

つまり、研究を出した本人が取り下げている主張を、この記事はタイトルに掲げていたことになります。訂正します。

ポーズで、ホルモンは動かない。ここは、はっきり書いておきます。

ただし——だから姿勢などどうでもいい、という話にはなりません。私が実際に効果を感じているのは、ホルモンとはまったく別の場所でした。

それでも姿勢を直すべき、3つの理由

1. 見られている印象が、実際に変わる

これがいちばん確かです。冒頭の集合写真の話がそうでした。姿勢は、こちらが何も言わないうちに相手が読み取ってしまう情報です。

実際、姿勢を正すようになってから、「自信がありそう」と言われるようになりました。そして時々、「オーラがある」とまで言われます。中身が変わったわけではありません。背筋を伸ばしただけです。

おそらくオーラの正体はこれです。大半の人が猫背だから、まっすぐ立っているだけで浮き上がって見える。そういう相対評価だと思っています。

2. 自分の感じ方は、確かに変わる

先ほどの追試で、ホルモンの変化は否定されましたが、「力を感じる」という主観的な効果のほうは再現されています。

これは軽んじるべきではありません。商談の前、面接の前、人前で話す前。気持ちが整うなら、それだけで十分に価値があります。血液の数値が動かなくても、本人の状態は動く。

3. 単純に、体が楽になる

猫背は肩や首に負担をかけ、呼吸も浅くします。スマホを見るときの前傾姿勢を何時間も続けていれば、体に来るのは当然です。

姿勢を直して肩こりが減る、呼吸が深くなる。ホルモンの話より、こちらのほうがはるかに実感しやすい変化です。

テストステロンが気になるなら、姿勢ではなく別の道がある

ここは書き換えが必要な部分なので、丁寧に書きます。

テストステロンが加齢とともに下がるのは事実です。一般に20代をピークとして、30代以降はゆるやかに低下していきます。「なんとなくやる気が出ない」「昔ほど前に出られない」という40代・50代の感覚と、無関係ではありません。

ただし、それを上げる手段としてポーズを持ち出すのは筋が悪い。効くと分かっているのは、もっと地味なほうです。

  • 筋力トレーニング(特に大きな筋肉を使うもの)
  • 十分な睡眠
  • 体脂肪を増やしすぎないこと

私がHIITとバーピージャンプを続けているのは、この理屈からです。2分立つより、こちらのほうが確実です。

本当に気になるなら、測ってしまうのが早い

そしてもうひとつ、意外と知られていないことがあります。

テストステロン値は、泌尿器科で測ってもらえます。血液検査で、遊離テストステロンなどの数値を調べる形です。推測で悩むより、数字を見てしまったほうが早い。

そして数値が低く、症状もあって加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)と診断された場合には、男性ホルモン補充療法という選択肢があります。診断基準を満たせば、注射も定期的な血液検査も保険適用で受けられるケースがあります。

ポーズを2分とることと、この選択肢を知っていること。どちらが実際に人生を変えるかは、比べるまでもありません。

※適用の可否は検査結果と症状によって判断されます。治療にはメリットと副作用の両方があり、前立腺の状態などによって受けられない場合もあります。気になる方は自己判断せず、泌尿器科でご相談ください。

私がやっている、3つのこと

姿勢について、実際に続けているのは3つだけです。

筋トレをする。姿勢を支えているのは意識ではなく筋肉です。意識だけで背筋を伸ばし続けるのは無理があります。背中と体幹に力がついてくると、放っておいても姿勢が崩れにくくなる。結果として、テストステロンにも効く。一石二鳥です。

普段から立ち姿を意識する。電車を待っているとき、レジに並んでいるとき、人と話しているとき。誰も見ていないと思っている時間の姿勢が、そのまま人に見られている姿勢です。

歩くときも、胸を張って歩く。胸骨を前に出すイメージで進みます。これが習慣になると、意識しなくてもその歩き方になる。動きの質という話を別記事に書きましたが、歩き方はその中心にあります。

今日からできる、3つのこと

集合写真を見返す。これがいちばん効く出発点です。自分の立ち姿を、他人の目線で見る機会はめったにありません。姿勢のいい人と並んでいる写真があれば、なお良い。私はそれで始めました。

壁に背中をつけて立ってみる。かかと、お尻、肩甲骨、後頭部を壁につける。これが基準の姿勢です。つらいと感じるなら、それだけ普段の姿勢が崩れているということになります。

スマホを目の高さまで上げる。下を向いている時間が、一日の姿勢のうち相当な割合を占めています。腕は疲れますが、首はずっと楽になります。

まとめ

この記事はもともと、「胸を張るとテストステロンが20%上がる」という話で組み立てられていました。その根拠は、著者本人によって取り下げられています。訂正します。

ただ、姿勢を直す理由がなくなったわけではありません。むしろ、根拠が正直になった分だけ話は単純になりました。ホルモンは動かない。でも、人からの見え方は変わる。自分の気分も変わる。体も楽になる。それで十分ではないでしょうか。

そしてテストステロンが本当に気になるなら、ポーズではなく、筋トレと睡眠と、必要なら泌尿器科です。近道のふりをした遠回りに、時間を使わないでください。

ホルモンは、ポーズでは動かない。だが印象は、背筋を伸ばしたその日から動く。

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