笑顔で若く見える、は逆だった|それでも50代の男が笑う理由

「笑顔でいると、見た目が若く見える」

40代・50代向けの身だしなみの記事で、よく見かける言葉です。「5歳若返る」と書いてあるものもあります。

ところが、実際に確かめた研究を読んでみると、結果は逆でした。笑顔の写真は、無表情の写真より年上に見られていたのです。しかもその差がはっきり出たのは、40代・50代の男性でした。

それでも私は、毎日笑顔を意識しています。この記事は、その理由の話です。

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「笑顔で若く見える」は、実験では逆だった

この問題を続けて調べているのが、心理学者のガネル氏らの研究グループです。

2015年の研究では、同じ人の「笑顔の写真」と「無表情の写真」を見せて、年齢を当ててもらいました。すると、笑顔の写真のほうが年上に見積もられました。原因は、笑ったときにできる目尻のしわだと考えられています。

面白いのはここからです。2018年の研究では、実験のあとで参加者に「どちらが若く見えたか」を聞いています。すると多くの人が「笑顔のほうが若く見えた」と答えました。自分の目では年上に見積もっていたのに、記憶の中では逆になっていたのです。研究者はこれを「信念に反する効果」と呼んでいます。

「笑顔は若く見える」という話がこれだけ広まっているのは、私たちがみんな、そう信じ込んでいるからなのかもしれません。

40代・50代の男性は、特に当てはまる

2021年には、年代と性別ごとに分けて調べた研究も出ています。

写真の人の年代男性女性
20〜39歳笑顔のほうが年上に見えた笑顔のほうが年上に見えた
40〜59歳笑顔のほうが年上に見えた差はなかった
60〜79歳差はなかった差はなかった
出典:ガネル氏とグッデール氏の研究(2021年、ネイチャー系の学術誌に掲載)。差はおおむね1〜2歳ほど。

40〜59歳で笑顔が年上に見えたのは、男性だけでした。論文では、同じ年代の女性は目尻のしわをケアしている人が多いことを理由の一つに挙げています。

つまり、40代・50代の男性に「笑えば若く見えますよ」と言うのは、研究から見ると正確ではありません。研究の上では、笑うと少し年上に見られます。

ほかによく見る「笑顔の効果」も確かめた

ついでに、笑顔の記事でよく見かける話をあと2つ確かめました。

「第一印象は0.1秒で決まり、笑顔なら信頼度が2倍になる」。0.1秒の部分には元になった研究があります。米プリンストン大学のウィリス氏とトドロフ氏の研究(2006年)で、0.1秒見ただけの顔の印象が、時間をかけて見たときの印象とほぼ一致することを示しました。特に一致したのが「信頼できそうか」でした。ただしこの研究は、笑顔と無表情を比べたものではありません。「2倍」の出どころは見つかりませんでした。

「口角を上げると、脳が幸せ物質を出す」。表情が気分に影響するという考え方は昔からあり、ペンを口にくわえて笑顔の形を作る有名な実験もありました。ところがこの実験は、17の研究室による大規模な追試で再現できませんでした。その後の国際的な共同研究では、笑顔をつくると気分が少し上がるという結果が出ていますが、その効果は小さなものです。「幸せ物質が出る」というところまでは言えません。

健康や見た目の話には、元の研究より大きく伝わっている数字がよくあります。タバタ式の4分を調べたときも、同じでした。

仏頂面だった30代から40代

では、若く見えないなら笑顔に意味はないのか。私はそうは思っていません。それは、仏頂面だった時期を知っているからです。

30代から40代にかけて、仕事と家庭のストレスが重なっていました。気がつくと、無表情が私の「いつもの顔」になっていました。

ある日、鏡の前で笑ってみようとしたら、頬がピクピクと痙攣しました。笑顔を保つ筋肉が、すっかり衰えていたのです。このときの話と、そこから始めた笑顔の筋トレは、別の記事に書いています。

新幹線で、前の席の子どもが笑いかけてきた

笑顔でいられた時期のことで、よく覚えている場面があります。

新幹線に乗っていたときです。前の席に、お母さんと小さな子どもが並んで座っていました。その子が、何度も座席の上から振り返っては、私に向かってニコニコと笑いかけてきたのです。

少なくともあの子にとって、私は怖い大人ではなかったのでしょう。あのとき自分がどんな顔をしていたのか、子どもの笑顔が教えてくれた気がします。

若く見せたいのではない

私が笑顔を意識しているのは、若く見せたいからではありません。

少しでも、周りの人に幸せな気持ちになってもらいたい。理由はそれだけです。新幹線のあの子のように、こちらが笑っていれば、向こうも笑ってくれることがある。それで十分だと思っています。

研究では、笑うと老けて見える原因は目尻のしわでした。でも私は、目尻のしわを気にしていません。むしろ、良い生き方をしてきた証だと思っています。笑ってきた回数だけ刻まれたしわなら、少しくらい年上に見られても構いません。

笑顔を意識するようになって、変わったこと

仏頂面の時期と比べて、実際に変わったことを挙げておきます。

  • レジの店員さんが、世間話をしてくれるようになった
  • 取引先の担当者の対応が、柔らかくなった
  • 子どもやお年寄りが、ふと笑いかけてくれることが増えた
  • 女性との会話が、自然に始まるようになった
  • 家族との会話が増えた
  • 自分の気持ちが、前より安定した

どれも、若く見えたから起きたことではないと思います。話しかけやすい顔になったからだと、私は思っています。

今も続けている「口角チェック」

いまも毎日続けているのが、気づいたら口角を上げる「口角チェック」です。私は、次のタイミングで確認しています。

  • スマホを見るたびに
  • エレベーターに乗るたびに
  • 誰かと目が合った瞬間に
  • 仕事のメールを送る直前に
  • 家族や店員さんと話し始める瞬間に

口角が下がっていたら、少し上げる。それだけです。道具も時間も要りません。

まとめ

「笑顔で若く見える」は、研究では逆でした。

  • 笑顔の写真は、無表情より年上に見られた。原因は目尻のしわ
  • 40〜59歳では、男性だけが笑顔で年上に見えた
  • それなのに人は「笑顔は若く見える」と信じ込んでいる

それでも私は笑います。若く見せるためではなく、周りの人に少しでも幸せな気持ちになってもらうためです。目尻のしわは、そのために払っている代金だと思えば安いものです。

若く見える顔より、話しかけたくなる顔でいたい。

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