捨てられないのは、モノが惜しいからではなかった|40代が趣味の道具を手放せた理由

押し入れを開け、20年ぶりにスピニングリールを手に取る50代の男性。ロッドケースとルアーケースが並ぶ

押し入れに、釣り道具が眠っていました。

釣りに行かなくなってから、20年です。一度も使わないまま、20年そこにありました。

それをメルカリに出したところ、最新のMacBook Airが買えました。

この話をすると、たいてい「よく捨てられましたね」と言われます。でも私は、捨てていません。渡しただけです。そして、その違いが決定的でした。

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なぜ20年も、手放せなかったのか

正直に書くと、何度も「片づけよう」とは思っていました。押し入れを開けるたびに目に入るのですから、忘れていたわけではありません。

でも、そのたびに手が止まりました。

釣り道具を見ると、その頃の情熱を思い出してしまうのです。

どこへ行ったか。何が釣れたか。どれだけ夢中だったか。竿やリールを手に取ると、そういうものが一緒に出てきます。とてもではないけれど、捨てることはできませんでした。

いま振り返ると、あのとき私が惜しんでいたのは、道具ではありませんでした。

惜しかったのは、あの頃の自分のほうです。

道具を捨てるという行為が、あれだけ夢中になっていた時間そのものを否定するように感じられた。だから20年、動けなかったのだと思います。

片づかない部屋の原因は、ものぐさではなく、たいていこれです。捨てられないものには、必ず昔の自分がくっついています。

「またやるかもしれない」は、たぶん来ない

もうひとつ、手が止まる理由がありました。

「またやるかもしれない」です。

これは強い言葉で、なかなか論破できません。実際、再開する可能性はゼロではないのですから。

でも、あるとき数字で考えてみました。

20年です。もし本当に再開する気があったなら、この20年のどこかで再開していたはずです。仕事が忙しかった年もあれば、時間があった年もありました。それでも一度も竿を出さなかった。

やらなかったという事実そのものが、答えでした。

ただし、「もう二度とやらない」と決める必要はありません。ここが大事なところです。

もし再開したくなったら、そのときに新しい道具を買えばいい。むしろ20年前の道具は、そのときにはもう古くなっています。取っておいたところで、結局買い直すことになる。

そう考えたら、手放す理由のほうが多くなりました。

捨てるのではなく、渡す

それでも「捨てる」という言葉には、最後まで抵抗がありました。

踏ん切りがついたのは、メルカリに出すと決めてからです。

やっていることは同じように見えて、心の中では別物でした。

捨てる渡す
行為の意味断ち切るつなぐ
そのあとゴミになる誰かが使う
過去の自分否定した気になる引き継いでもらえる

押し入れで20年眠っていた道具が、それを欲しいと言う人のところへ行く。使われない状態から、使われる状態に戻る。

この形なら、あの頃の自分も否定せずに済みました。手放すのではなく、引き継いでもらう。言い方が変わっただけですが、私にはこれが必要でした。

出品の手間も、結果的には良かったと思っています。写真を撮って、説明を書く。その一手間が、最後にもう一度だけ道具と向き合う時間になりました。そこできちんと区切りがつきます。

20年分が、パソコン1台になった

売れた金額は、自分でも驚くものでした。

最新のMacBook Airが、1台買えました。

ちょうど買い替えたいと思っていたパソコンです。押し入れの奥で眠っていたものが、そのまま新しい仕事道具になりました。

それでもお金は余ったので、残りは個人事業の事業投資に回しました。

ここで、自分でも思いがけないことに気づきました。

減ったのはモノだけではなかった、ということです。

20年前の趣味の道具が、今の仕事の道具に変わりました。押し入れで止まっていた資産が、動いて、今の自分が必要としている場所に移った。物も資金も、今いるべきところへ最適化されたという感覚です。

断捨離というと「減らす」話になりがちですが、私の実感は違いました。減らすというより、過去から現在へ移す作業でした。

後悔は、ひとつもありませんでした

手放したあとのことも、正直に書いておきます。

まず部屋がすっきり片づきました。押し入れの一角がまるごと空いたので、当然といえば当然です。

そして、心もすっきりしました。こちらのほうが意外でした。20年ぶんの「いつか片づけなきゃ」が、一度に消えたからだと思います。

後悔は、ひとつもありません。

あれだけ20年迷ったのに、手放したあとに「やっぱり惜しかった」と思った瞬間は一度もありませんでした。迷っている時間のほうが、ずっと重かったのです。

そして、こう整理できました。

  • ……部屋が片づき、必要な道具が手に入った
  • 買ってくれた人……欲しかったものが手に入った
  • 道具……押し入れではなく、また水辺に出られる

三方良しです。捨てていたら、こうはなりませんでした。

今日からできる、3つのこと

いきなり全部やらなくて大丈夫です。私も20年かかりました。

1. 押し入れを開けて、年数だけ数える

捨てる捨てないは、いったん考えません。「これに最後に触ったのは何年前か」だけを見ます。

数字が出た瞬間に、たいていのことは決まります。5年、10年、20年——その年数が、そのまま答えです。

2. 「捨てる」ではなく「出品する」と考える

言葉を変えるだけで、手が動きます。捨てるのは断ち切ることですが、出品するのは次の人に渡すことです。

捨てられない人ほど、この置き換えが効きます。

3. 売れたお金の使い道を、先に決めておく

これはやってよかったことです。「買い替えたいパソコン」という行き先が決まっていたから、迷いが減りました。

手放すことが目的だと気が重くなりますが、何かに換えるのだと思えば、前向きな作業になります。

まとめ|押し入れにあったのは、道具ではなかった

この記事の要点をまとめます。

  • 釣りに行かなくなって20年、道具は押し入れで眠っていた
  • 捨てられなかったのは、モノが惜しいからではなく、あの頃の情熱を思い出すから
  • 「またやるかもしれない」は、20年やらなかった時点で答えが出ている。再開するならそのとき新しい道具を買えばいい
  • 「捨てる」ではなく「渡す」と考えたら、手が動いた
  • 売れた金額でMacBook Airを買い替え、余りは事業投資へ。後悔はひとつもなかった

40代・50代の押し入れには、たいてい何かが眠っています。ギター、カメラ、ゴルフクラブ、スキー板。どれも高かったし、どれも夢中だった。

手放せないのは、あなたが優柔不断だからではありません。

押し入れの中にあったのは、釣り道具ではなく、20年前の私自身でした。

その自分は、もう十分に楽しんだあとでした。だから、次の人に渡してよかったのだと思います。

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