年齢を重ねると、物事をゆっくり考えることが増えてきます。
それ自体は悪いことではありません。経験が増えた分、急いで決めずに、いろいろな角度から考えられるようになった。むしろ良いことだと思っています。
ただ、40代・50代の毎日には、スピードが必要な場面がまだたくさんあります。トラブルはこちらの都合を待ってくれませんし、会議は考えがまとまるまで止まってくれません。
落ちてきた考えるスピードを取り戻すのに、私が知っている限りいちばん良かったのが、赤羽雄二さんの『ゼロ秒思考』でした。錆びついた頭を再起動するには、これが一番の方法だったと思っています。
経験したことのない場面で、決めるのが遅かった
この本に出会ったのは、出版された頃、私が40歳前後のときです。
当時の私は、経験したことがない出来事に出くわすと、どうするかを決めるまでに時間がかかっていました。慣れた仕事なら迷わない。でも、初めての状況になると頭が止まってしまう。考えているつもりで、実は同じところをぐるぐる回っているだけでした。
年齢とともに、考える回転が落ちていたのだと思います。
ゼロ秒思考は、1ページ1分のメモ書き
『ゼロ秒思考』は、マッキンゼーに14年いた赤羽雄二さんが2013年に出した本です(出版社のサイトでの解説)。やり方は驚くほど単純です。
- A4の紙を横に置く
- 左上に、考えたいことをタイトルとして書く
- その下に、思いつくことを4〜6行書く。1行は20〜30字
- 1ページを1分以内で書き終える
- これを毎日10ページ続ける
ポイントは「1分」という制限です。きれいにまとめようとする暇がないので、頭の中にあるものがそのまま紙に出てきます。1分で4〜6行ですから、考えを止めている時間がありません。
1か月続けたら、練習がいらなくなった
本を読んだあと、私は1か月以上、毎日書き続けました。
そして、あるときからわざわざ練習する必要がなくなりました。仕事で何かを考えるとき、自然と同じやり方で考えるようになっていたからです。
高い回転で考えをめぐらせながら、同時に一つのことを深く掘っていく。速く考えることと、深く考えることが、両立するようになりました。ゆっくり考えないと深くならない、と思い込んでいたのは、単に速く考える練習をしていなかっただけでした。
スピードが必要な場面で、頭が止まらなくなった
効果をいちばん感じたのは、待ったなしの場面です。
- クレームが出たとき
- 急な悪天候で、乗るはずの飛行機が飛ばなくなったとき
- 経験したことのない内容を、速いテンポで決めていく会議
どれも、ゆっくり考えている時間はありません。以前の私なら、ここで頭が止まっていたはずです。
ゼロ秒思考の型が身についてからは、まず頭の中で4〜6行を書くように、やるべきことや選択肢を並べるようになりました。完璧な答えでなくても、私の場合は、並べてしまうと次の一手が見えてきました。
うまくいかない場合も、先に書いておく
もう一つ、思ってもいなかった効果がありました。うまくいかなかった場合を想定して、別の選択肢を用意しておく習慣がついたことです。
考えを書き出していると、「こうなったらどうするか」まで自然と書くようになります。そうすると、最悪の場合にどれくらい失うのかが見えてきます。
これが、新しいことに挑戦するときに効きました。最大の損失が分かっていれば、それを受け止められるかどうかで判断できます。分からないから怖かったものが、分かれば怖くなくなる。挑戦のハードルが下がり、結果として前より活動的になりました。
私はこの考え方を、大きなことにも小さなことにも使っています。
- 転職のような大きな決断。48歳で転職したときも、判断の材料にしました
- 苦手なお客さんのところへ営業に行くかどうか。小さなことですが、行動するかどうかの判断に使っています
- 車のスピードを上げたくなったとき。最大の損失は大きいのに、得られるものは小さい。そう判断できるので、自然と安全運転になりました
三つ目は、挑戦ではなく「やめておく」判断です。最大損失を考えるのは、背中を押すためだけではありません。やらないほうがいいことも、はっきり見えるようになります。
毎日10ページは難しくても、考えるときの型にする
正直に書くと、本にあるとおり毎日10ページを続けるのは、忙しい40代・50代には難しいかもしれません。
でも、毎日続けなくても効果はあります。何かを考えるときの方法として使うだけで、一定の深さを保ったまま、考えるスピードが上がります。
私の今の使い方はこうです。
- 基本は紙に書く
- 紙が手元にないときは、スマホのメモ帳に書く
- それもできないときは、頭の中で4〜6行を並べる
最初の1か月だけ本のとおりにやって型を体に入れ、あとは必要なときに使う。私にはこれがちょうどよい付き合い方でした。
合わない人もいると思います
ここまで良いことを書いてきましたが、ゼロ秒思考が誰にでも合うとは思っていません。
- 本のとおりにやると、毎日時間がかかります。1ページ1分でも、10ページ書けば10分です。紙を用意する手間もあります
- 手で書くのが苦手な人には、負担に感じるかもしれません。私も紙が手元にないときはスマホに書いていますが、基本は紙です
- やり方そのものは、この記事に書いたとおり単純です。本を買わなくても、今日から始められます。本は、書くテーマの選び方や続け方まで知りたい人に向いています
それから、ゼロ秒思考は考えを整理するための方法で、心の不調を治すものではありません。気持ちの落ち込みが続くときは、ひとりで書き続けるより、医療機関や専門家に相談してください。
▼私が読んだ本
やり方の細かいところや、書くテーマの選び方は本に詳しく書かれています。1ページ1分なので、今日から始められます。

ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング
まとめ
ゆっくり考えられるようになったのは、年齢を重ねた良さです。でも、速く考える力まで手放す必要はありません。
- ゼロ秒思考は、1ページ1分・4〜6行のメモ書き
- 1か月続けたら、仕事で自然と同じ考え方をするようになった
- クレームや急なトラブルでも、頭が止まらなくなった
- 最大損失を想定できると、挑戦しやすくなる。やめておく判断もしやすくなる
- 毎日10ページは無理でも、考えるときの型として使えば十分
ゆっくり考える力は残したまま、速く考える力を取り戻す。錆びついた頭の再起動に、1枚1分から始めてみてください。



