「いい人だよね」は、丁寧な通告だった|恋人フォルダと友達フォルダを分けるもの

黒い背景の中、片側からの光に照らされ、視線を外して何かを思い返すような表情を浮かべる50代の日本人男性

「〇〇さんって、いい人だよね」

若い頃、私はこう言われるたびに悪い気がしませんでした。自分もそんなに悪くはないんだな、と素直に思っていたのです。

実際、女性の友達は多いほうでした。よく相談もされたし、飲みにも誘われた。それなのに、彼女ができない。誰からも、特別な人としては見てもらえませんでした。

あの言葉の意味が分かったのは、ずいぶん後のことです。「いい人だよね」は褒め言葉ではありませんでした。丁寧な通告です。

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「4秒で決まる」は、正確ではない

この話題には、よく引き合いに出される数字があります。「女性は男性と会って4秒で恋愛対象かどうかを判定している」というものです。

正直に書きます。この記事にも以前、その説を根拠つきで載せていました。ところが出典とされる論文を実際に確認したところ、書かれている内容が違っていたので、書き直すことにしました。

元になっているのは、AmbadyとRosenthalが1992年に発表した研究です。ただしこれは「短い観察から人の特性や結果をどれだけ正確に予測できるか」を調べたメタ分析で、女性に限った話でも、恋愛対象の判定でもありません。「4秒」という数字も出てきません。

では何が分かっているのか。この研究が示したのは、次の2つです。

  • 人は、5分以下のごく短い観察でも、相手についてかなり正確な判断を下せる
  • 30秒未満の観察と、4〜5分の観察とで、精度がほとんど変わらない

むしろ、こちらのほうが怖い話だと思いませんか。4秒かどうかは重要ではありません。問題は、短時間で下された判断が、そこそこ当たっているということです。

当たっているから、小手先では覆せない。相手が見抜いているのは、その日のあなたではなく、それまでのあなただ。

恋人フォルダと友達フォルダを分けるもの

では、何を見て振り分けられているのか。私の経験から言えば、だいたいこのあたりです。

恋人フォルダ友達フォルダ
視線堂々・余裕泳ぐ・媚びる
低く落ち着いた早口・高い
距離感適度な緊張感無遠慮・距離なし
会話自己軸で提案する「何でもいいよ」を連発
匂い清潔感+ほのかな香り無臭または加齢臭

見ていただくと分かりますが、ここに書かれているものは、どれも会話の内容ではありません。視線、声、距離、におい。言葉になる前に伝わってしまうものばかりです。

だから短時間で判断がつくし、だから取り繕えない。出会いは視覚・嗅覚・聴覚で決まると別記事に書いたのは、こういうことです。

一度入ったフォルダは、ほぼ動かない

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

「友達フォルダから恋人フォルダへ移動する方法」を説く記事はたくさんあります。私も昔は探しました。でも、自分の人生を振り返って正直に数えてみると、実際に移動が起きたのは、生涯で1回だけです。

しかも、その1回というのが30年ぶりに再会した相手——今のパートナーでした。

この事実は、けっこう重い意味を持っています。フォルダが動くのに必要だったのは、テクニックではありませんでした。相手の中の古い印象が、いったん消えるくらいの時間です。30年です。

逆に言えば、日常的に会い続けている関係の中で分類をひっくり返すのは、それほど難しいということです。週に一度会う相手なら、印象は上書きされるどころか、毎回補強されていきます。

フォルダは移動できないわけではない。ただ、移動を待つ人生は、あまりに時間がかかる。

だから、最初から恋人フォルダに入る

結論はここに行き着きます。移動を狙うのではなく、エントリーの時点で入る。

身も蓋もない話に聞こえるかもしれません。でも、短時間の判断がそこそこ正確だという事実と、一度決まった分類が動かないという事実を並べれば、答えは一つしかありません。会う前の自分を、変えておくしかない。

これは、ある意味で救いのある結論でもあります。相手の心理を読む必要も、駆け引きを覚える必要もないからです。やることは、自分を磨くという一点だけになります。

磨くものは、4つしかない

では何を磨くのか。私は4つだと思っています。

  • :清潔感、姿勢、におい、体型。言葉より先に伝わる部分
  • :機嫌の安定、他責をやめること、自分の軸を持つこと
  • 出会い:人と会う場に出ること、そこでの振る舞い
  • 経済力:稼ぐ額そのものより、お金との付き合い方

このブログを4つのカテゴリーに分けているのは、そのためです。イケおじの7つの条件にまとめた話も、結局はこの4つを地道に積み上げるという一点に尽きます。

派手さはありません。1週間では変わりません。でも、4秒で見抜かれるものは、この4つの積み上げでしか作れないのです。

今日からできる、3つのこと

「いい人だよね」と言われた回数を、思い出してみる。心当たりが多いなら、それは人柄が評価されている証拠であり、同時に恋愛対象から外されてきた記録でもあります。まず、そこを直視することからです。

今いる関係を、ひっくり返そうとしない。すでに友達フォルダに入っている相手に働きかけるのは、いちばん効率が悪い戦い方です。その労力は、自分を磨くほうに回してください。

4つのうち、いちばん弱いところを1つだけ選ぶ。体・心・出会い・経済力。全部を同時にやろうとすると続きません。「いい人で終わる男」と「恋人になれる男」の違いも、突き詰めればこの積み上げの差です。

まとめ

「いい人だよね」と言われて喜んでいた青年時代の私に、今なら伝えたいことがあります。

その言葉は、悪い評価ではありません。ただ、あなたが望んでいる評価とは、別の種類のものです。そしてそこから移動しようともがいた時間は、ほとんど実を結びませんでした。実際に動いたのは、30年という時間が印象をリセットしてくれた一度きりです。

移動を狙うより、最初から入れるようになるほうが早い。そのために磨くものは、体と心と出会いと経済力の4つだけ。地味ですが、これ以外に道はありませんでした。

フォルダは、会った瞬間に決まる。だが中身は、会うまでの何年かで決まっている。

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